『人生フル-ツ』

雑木林の中、赤い屋根の平屋で暮らす90歳の建築家・津端修一さんと妻・英子さんの日常を追った映画『人生フル-ツ』自然とともにある建築を追い求め続ける夫と彼を支える妻の生活は、真に豊かな暮らしとは何かを教えてくれます。最晩年は佐賀県伊万里市の医療福祉施設の設計草案を無償で手がけましたが、2015年6月2日に老衰で亡くなりました。

年を重ねるほど美しくなる人生。ゆっくりと、味わい深く、静かに語りかけてくれる映画『人生フル-ツ』映し出されるのは、ごく平凡な老夫婦の平穏な日常。二人三脚で実践してきた60年の暮らしの中には、ライフスタイル(住むこと、暮らすこと)の美学と信念が美しく映し出されています。
 
 雑木林のような庭をもつ家で、ほぼ自給自足の生活を送る津端夫妻は、食や暮らしに関する著書を出版するなど「スローライフの達人」として知られています。修一さんは、設計士として数々のニュータウン開発に関わったのち、大学で建築を教えた、自称「自由時間評論家」。妻の英子さんは、「あの人のやりたいことは何でもやらせてあげる」という驚くべき寛容さで、自庭で120種類もの野菜や果実を育て、夫のために料理をふるまっています。81f19b00083bd255_4751-w234-h260-b0-p0--

「僕の最高のガールフレンド」と妻のことを呼ぶ修一さん。チャーミングで、仲睦まじい夫妻の出会いのきっかけは、ヨットでした。戦時中は海軍の技術士官であり、学生時代はヨット部に所属した修一さん。海には特別な思いを持っていたそうです。

 「家は、暮らしの宝石箱でなくてはいけない」―ル・コルビュジエ
津端夫妻の家は、アメリカ人建築家、アントニン・レーモンドが西麻布に建てた自宅兼アトリエにならったもので、修一さんは、東京大学工学部建築学科で丹下健三のもとで建築を学び、1951年から3年間レーモンド事務所に所属。レーモンド邸兼アトリエで働き、「建築と自然とを一体化させる」という師の思想に感化されたそうです。自ら設計に関わった高蔵寺ニュータウンの一角に敷地を購入し、1976年に建てた家は、師の哲学を形に、築40年の建物は、玄関ではなくテラスから出入りをする、庭と一体化した家。杉丸太を剥き出しにした天井、その天井と壁を支える「鋏状(シザース)トラス」とよばれる木組み、陽光を採り込む高窓、障子やサッシを自由に開け放てる「芯はずし」とよばれる手法など、「レーモンド・スタイル」がつまった家でした。
 
「すべての答えは、偉大なる自然のなかにある」―アントニ・ガウディ
庭の樹木や花、野菜の1つ1つに、修一さんが手づくりしたプレートがつけられています。夫妻が丹精込めて育てた野菜や果物は、英子さんが調理して、津端家の食卓だけでなく、娘さんや大学生のお孫さんの元にも届けます。毎日の食事をおざなりにせず、自然のめぐみに感謝しながら味わいつくすことの大切さ。映画の中で紹介される、修一さんが孫のためにつくったドールハウスは、建物だけでなく家具や調度品にいたるまで、20分の1で精巧に細工してあり、何よりも自然素材が大切という思いから、プラスチックを避け、木や布などで仕上げています。
 
「ながく生きるほど、人生はより美しくなる」―フランク・ロイド・ライト
効率性やスピード、利益ばかりを追い求めがちな現代社会にありながら、自然を慈しみ、日々をコツコツと丁寧に生きる津端夫妻の姿は、理屈抜きに美しい。「特に晩年になっていい顔になったなぁと思う」という英子さんの言葉どおり、修一さんは柔和な表情をたたえて、日々、マイペースに暮らしている姿。長年連れ添った二人ならではの充実した、潤いあふれる暮らしが、美しい映像でとらえられています。
 
風が吹けば、枯れ葉が落ちる。
枯れ葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ。

 

 kinoshita

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